2007年 06月 19日
思い出せないこと。
最初にお断りしますが、今日はパリの話題でも、ハイドシェックの話題でもありません。
ブログのテーマからかなり外れております(笑)

パリでの試験の事を思い出しているうちに、
あることを思い出したんです。

「思い出せないこと」を「思い出した」のです。。

へ?なんだそりゃ?





それは私がまだと~っても若かった頃。。。
大学受験のおはなし。

受験というのは、なんであんなに追い詰められるんでしょうか。
過ぎてしまえば、人生の中でもっと大変な事なんて山ほどあるのに。
その時はもう、合格する事が全て、みたいな。
当時レッスンを受けていた先生は、私に言いました。
「アナタはミスさえしなければ、受かる」と。

でも。でも。
当時の私はミスタッチの女王と言われた女(言われたかどうかはわかんないけど、自覚してた)
ミスなんて問題じゃないわ、音楽が一番大事!とエラそうな事を言ってました。

そこをぐさっと当時の先生に攻められたわけです。
毎回のレッスンで求められるのは「ミスなしで演奏すること」
ミスは、受験の大敵である。ミスは減点に直結する。
そしてこれは、残念な事に、正しい。
フィギアスケートなんかも、そうですね。
どんなに芸術的でも、ミスはミス。容赦なく減点される。だって選考会だから。

私は追い詰められました。精神的に全く余裕がなくなってしまった。
で、頭はカッカ、身体は冷え冷え、の体調不良に。
一般的に言う、自律神経失調性、という診断を受けました。
練習してても自分の音が全く聞こえてこない、集中できない。

まぁでも、この時期辛いのは私だけじゃなかったし
音楽科に在籍してたので、クラスの仲間全員がストレスと戦っていたから。
孤独感はなかったかもしれない。
で、なんとか受験当日まで頑張ったんですね。


受験は、一次、二次、最終選考、と3段階ありました。
実は私、その1次試験でこわ~~~い経験をしたのです。

一次試験プログラムは、ショパン&バッハ。音大受験の大定番と言われる組み合わせです。
先生からは、特に一次試験ではミスは許されませんよっ!と念を押されていました。
沢山準備したんだから…落ち着いて弾けば大丈夫。
そう自分にどうにか言い聞かせるのですが
順番が来るまでの心境は今思い出しても冷や汗をリアルにかく位、緊張状態でした。

そして、順番が来て…1次試験が終わりました。


あぁ。。終わった。。
そうだ、母にすぐ電話しなくちゃ。


当時、まだ携帯は普及していなかったので大学の公衆電話で母に電話。
そこで…私は恐ろしい事に気がついたのです。

母:「どうだったの?上手く行ったの?」
私:「いや…それが…」
母:「なに?なにかやらかしたの?」
私:「実はさ…バッハを弾いたかどうか…覚えてない…


なぬ~~~~~~~~~!




電話をして母の声を聞いたとたんに、バッハを弾いたかどうか覚えていない自分に気がつきました。
そりゃあもう、ぶったまげましたよ。
弾いたような気はするんだけど、どうも良く覚えてない…なんて。
電話の直前に演奏し終わったばかりなんですよ。


これにはもう、母もビックリ、私はビックリ通り越して放心状態。
一生懸命思い出そうとするんだけど、ぽっかり穴が開いたように思い出せない。
「やばい」と思いました。
上手く弾けませんでした、で落っこちるのはまだいい。
曲を弾いてくるのを忘れました、なんて。



家に帰ると言葉のない、母。
そりゃ~そうですよ。
わが娘、ついにプッツンきたかしら、と。
もともと出来が良くなかったけどついに病気かって思ったでしょうね。


怖いけど、確かめるしかない。
夜になって私は勇気を振り絞って、先生に電話しました。
先生は試験官として会場で私の演奏を聞いていたので。

あぁキンチョーの一瞬。
取り返しのつかない事をしてしまった、という自責の念。




…先生の一言は思いがけない言葉でした。

「バッハは完璧だったけどショパンはちょっとねぇ、危なかったわね」



ん?バッハは完璧?
私、バッハ弾いたんですか?


とバカな質問はさすがに、しませんでした。
平静を装い、ご意見ありがとうございました、結果を待ちます、と丁重に電話を切りました(笑)


わ~~い!
ワタシ、バッハ弾いてたよ~~!
大喜び(笑)


結局。
ワタシは受験に合格しました。
記憶喪失の一次試験、なんと通過したんですね~。


この経験。私は未だによくわからないんです。
というのは、今になっても私は一体その日バッハの何を弾いたのか、覚えていない。。。
受験で演奏したかという記憶もないし、
課題曲がどの曲だったのか、という事も覚えていないのです!

そんな事あるかい!コイツ話作ってる!と思われるみなさま。
でもね、本当なの…楽譜を見直しましたよ、さすがに私も自分で自分が信じられなかった。
でも、思い出せない。何ヶ月も受験に向けて毎日練習した曲を思い出せない。。
沢山先生の注意書きが書き込んであるのに。

後で、同じ大学を受験した友達にこの話を打ち明けました。
そりゃあもう、ビックリしてました。
「ほら、この曲だったでしょ」って教えてもらって。
でも…ぜ~~んぜん!覚えていない。
弾いてみても、これまた初めて楽譜を見る感覚なので全く弾けませんでした。


ミステリー…。
これは今まで生きてきて、人生の中で一番のミステリーです。
やっぱり私、当時ビョーキだったんでしょうか。。。


ちなみに。
私は今まで舞台で演奏してきた曲は全部、覚えています。
すぐに思いだせなくても、忘れてる事はない。
小学校の頃から、思い出せます。
これって、医学的にとっても興味深い話じゃないでしょうか。

私の事、「結構オトコっぽいですよね」と断言したアナタとか
オトコっぽいって言われたの~と泣きついたら「うん、そうだね」と言ったそこのアナタとか
「あんたって人見知りしないっていうか図々しいよね」とか言うアナタとか。

私だって繊細な一面があるんです!

思い出したらまた怖くなってきた~(>_<)


おしまい。
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by moncheminparis | 2007-06-19 10:52 | 日々のこと… d'habitude


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