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2007年 09月 10日
9.11 と 音楽
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明日9月11日で、あの恐ろしいNY同時多発テロから丸6年。

2001年の9月11日、このニュースを私はパリで知りました。
何気なくつけた部屋のテレビに映る映像を、始めはただの映画のワンシーンかと思いました。
でも、その映像の下に流れるフランス語のテロップ…
見慣れないその単語とその後ろにながれるアナウンサーの声。

attentat…ってなんだろう。

ドキドキしながら辞書で引いた言葉は、恐ろしい意味をもつ言葉。
何度も何度も繰り返し映されるその映像が、現実のものと判断できるまで
長い時間が必要でした。



このニュースを知ってすぐに私に芽生えた感情は、恐怖。
戦争が始まったらどうしよう、と思ったのです。
自分の母国ではないフランスでこのニュースを知った衝撃は、大きかったです。
戦争が起こって、日本に帰れなくなったらどうしよう。

私は、自分の事ばっかり考えたんですね。

攻撃を受けた国は、アメリカ。
このままで済むわけがないと、恐怖だけが膨らんでいきました。


それから3日後。

ある映像を見て私の恐怖で固まった心が解けました。
それはイタリアの映像。
正午に全てのテレビの放送を止めて、
かわりにアメリカへの追悼のメッセージと、
バックにサミュエル・バーバー Samuel Barber の「弦楽のためのアダージョ」(映画「プラトーン」で使われた事で有名ですね)
を流した映像のみを3分間放映したのです。

バーバーのアダージョは私の心にまっすぐ届きました。
そして私はこの時ようやく心から悲しいと感じる事が出来、
テレビの前で1人で大泣きに泣きました。

人間らしい、「悲しい」という感情がやっと蘇ったのです。
バーバーの音楽のお陰で、泣く事が出来た。
それまで私の心は恐怖で鉄火面みたいになっていたんです。

悲しみと同時に私はこの時、音楽の持つ力を再認識しました。
私が世の中で音楽を一番信じる理由は、これなんだなと。
人間はみな、本当は美しい心と慈しみの気持ちを持っているはず。
ところが、私欲や憎しみなどで、その気持ちはどこかへ忘れ去られてしまう。

でも音楽を聴けば、説明なんて要らない。
言葉よりもずっと説得力のある、心に届くメッセージだから。
「心」は人間が人間らしくあるために、一番大事なもの。
音楽によって、失われた多くの命に祈りをささげる事が出来る。



その後、より詳しい状況がわかるようになって、
いかにこの悲劇の根っこが深いか、理解しなくてはと思いました。
そして被害にあってしまった人、その家族、救助活動に向って被害にあってしまった消防士…。
多くの心が深く深く傷ついた事を知りました。

この事件を難しい解説付きで理解する事は私には出来ませんが
悲しみを共有する事は出来ます。
9.11を忘れないように…風化させないようにしなければ、と思います。



Samuel Barber 「弦楽のためのアダージョ」
映画「プラトーン」の映像と共に…。


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by moncheminparis | 2007-09-10 12:15 | 日々のこと… d'habitude


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